昨年のNHK紅白歌合戦で美輪明宏の「ヨイトマケの唄」がおおきな話題となった。
あなたも美輪明宏の世界に引き込まれて、圧倒的な感動を覚えたはずである。
実は、ぼくは姉の影響で、高校生の頃から、注目していた。
「ヨイトマケの唄」はもちろん、知っていたし、彼女(敢えて)が歌う「愛の讃歌」は絶品だった。
「愛の讃歌」の和訳といえば『あなたの燃える手であたしを抱きしめて・・・・・・』が一般的だが美輪明宏の「愛の讃歌」は『高く蒼い空が落ちてきたとしても・・・・・・』と迫力があった。
美輪明宏には、まだまだ、「ヨイトマケの唄」に並ぶ、あるいは、それ以上の歌がある。
「亡霊たちの行進」「ミロール」「街の皇太后」それに「老女優は去り行く」。
とりわけ舞台で聴く「老女優は去り行く」は至極の時である。
鳥肌さえ立ってしまう。
何も知らない、いなかっぺの少女が楽屋を訪ね、最初はまったく、相手にもされず、芽が出なかったけれど、段々と売れるようになって頂点を極める。しかし、恋人を失い、人間関係、男女関係のごたごたに巻き込まれ、ふと気がつくと、初老の女優になって愛してきた舞台を去る日がやってきたという物語調の歌である。
コンサートでは、アンコールの最終曲として歌われることが多かった。
歌い終えて、舞台から降りて、涙しながら足早に客席に消えてゆく圧巻のステージであった。
そんなことをチラチラ思い出しながら、紅白の「ヨイトマケの唄」を、ぼくは聴いていたのである。