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イオンの中にある、行きつけのカジュアル衣料の専門店で、ジーンズやTシャツを大人買いした帰り道、ふらりと一軒の本屋さんに寄ってみた。数十年ぶりのことだろう。無論、書店に行くこと自体、めずらしいことではない。どころか、どういう小説や実業書が売れているのか、どういう作家が登場してきたのか、少年誌、青年誌の表紙は、どのようなアイドルが飾っているのかなど、自分なりに時代に乗り遅れないというよりも、今の時代をしっかり見据えるために、積極的にリサーチしている。しかし、勤務先に近い、ジュンク堂紀伊国屋のような大型店舗ばかりでは味気なく、近頃は少々、飽きを感じ始めており、ここ数ヶ月は正直言って、足を運べていないのが実情だ。

あの日、もしも、いつものようにイオンに車で行っていたら、その本屋さんに寄ることはなかっただろう。ちょっとした気まぐれで、散歩がてら歩いていったので、その機会ができた。

その本屋さんは、ぼくが物心ついた頃から存在していて、書店というより、本屋さんという趣がある。小学校の頃、漫画を立ち読みしていると、店のおやじがハタキをパタパタさせながら近づいてきて、最終的には、頭にまでハタキをかけられ、よく追い出されたものだ。それも、今となっては、懐かしい。

本屋さんは、むかしの風情を残したまま、すこしだけ拡張していた。当然ながら、レイアウトも変わっている。小説の本棚を見にいった。。在庫は極端に少ない。

ぼくは、どうしても真っ先に好きな作家の本を探す。「み行」を目で追っていくと、宮部みゆき湊かなえ村上春樹・・・・。えっ、宮本輝ないの!?とショックを受けたが、気を取り直して、も一度慎重に目で追っていった。見つけた!本棚に村上春樹の「海辺のカフカ」と「遠い太鼓」の間に挟まれて1冊だけあった。「いのちの姿」という昨年末刊行されたエッセイ集だ。単行本よりかなり小さめのサイズだったから、見逃したのかもしれない。手に取ってあとがきを読んでみると、行きつけの料理屋の女将が発行するエッセイ集に、自分も巻き込まれ、半ば強制的に書かされたとあった。14篇のエッセイから成るハードカバーの180ページ程度の本だ。なので、どれどれとと読み進むうちに時間を忘れ、その場で読破してしまった(でも、ちゃんと買いましたよ)。それほどに、宮本輝のエッセイは引き込まれる。エッセイなのに短編小説の読後感がある。宮本作品に登場する人物の作り方や、構想の練り方や、独特の死生観や、創作の秘密の一部がかいま見えてくる。

宮本輝の世界から、現実に引き戻される

レジで精算してくれたのは、ぼくと同い年くらいの女性だが、むかし、ぼくら、立ち読み少年ハタキで追い出したおやじの娘さんだろうかと思った。

かなりの高齢だろうが、生きていてほしいと願いながら、本屋さんをあとにした。