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きのうは、桃の節句。20数年前、娘が生まれたとき、義母に買ってもらった雛人形を 二月の中頃から飾っていた。何段飾りという大仰なものではなく、マンションタイプの平飾りというのか、お雛様とお内裏様ふたりだけのもの。屏風や雛壇が、当時、めずらしかった漆黒で統一されていて、お雛様の顔も美しく、だれがというより、ぼくが、えらく気に入ってしまって買ってもらった。

その雛人形の 美しさ、妖しさに触発されて、当時、ぼくは、次のような詩を書いている。

 

     三月の童話

 

ねえさんが

いなくなった日

お雛様の隣にいらした

お内裏様の姿も

いっしょに

消えていたのです

 

ねえさんは

お内裏様を

とても気に入っていて

楽しそうに

話しかけたりしているのを

見たことがあります

 

ねえさんは

十六でしたが

はじめての恋だったのかもしれません

 

いなくなる何日か前

ねえさんが

めずらしく鏡の前に座って

淡いオレンジ色の

紅を引いていたのを

憶えています

 

はっと 息をのむほど

美しい横顔でした・・・・・・

 

今年も また

桃の節句が近づいてきました

 

お雛様は

ぽつんとひとり

涙も枯れて

がっくりと肩を落としたままです

 

玄関で

人の気配がするたび

もしや ねえさんではないかと

あわてて 階段を駈け降りていくのですが

あの日のように

花曇りの空の下

冷たい風が吹いてるだけです

 

              第二詩集「眠れない時代」収録

 

 

この作品は「金澤文学」という文芸総合誌の巻頭詩に採用され、ある文学賞を受賞するというご褒美をいただいた。

桃の節句ということで、ふと、むかしのことに、想いを馳せてみた。