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                          眠れない時代    

   

      ここ数日 わけもなく
   眠れない日が
   つづいていて
   心療内科を訪ねたが
   からだには
   別段 異状はないという

   まるい眼鏡をかけた
   ボサボサ頭の医師は
   「こんな荒廃した社会で
   枕を高くして眠れる人の方が
   余程 どうかしているのですよ」と
   小さく笑ったが ぼくには
   何の慰めにもなりはしない

   最後に医師は
   「眠れない時代なんです」と
   ぽつりといった
   そして 夜がきた
   「一度 試してください」といって
   処方してもらった薬の効果も
   あくびを一度しただけで
   絶望的な深い深い闇の森の中で
   ぼくは ぶざまにも
   何度も 寝返りを打って
   もがき苦しんだ

   ひつじの数も
   一七五八匹から先が
   わからなくなってしまった

   気分を変えて読みはじめた
   難しい小説も ぼくを眠りの世界へと
   誘ってはくれなかった

   午前二時を過ぎたころ
   眠ることをあきらめて
   この世に たった
   ひとりきりで生かされているような
   心細さで 息をひそめて
   ベッドのシーツに
   ぴったり耳をくっつけると

   今夜も また
   地球の裏側で
   だれかが 泣いている

                 第二詩集「眠れない時代」収録。

 

村山精二さんという、詩壇界の大先輩がいる。おそらく日本で

発刊された詩誌、詩集の大半が、彼の元に届くようになっている。

そのせいか、ぼくの詩集が発刊されるたびに、ぼくではなく、出版社が

彼のところに献本している。

村山氏は「ごまめのはぎしり」というサイトを運営されていて

献本された詩誌、詩集について、大変詳しく解説されていて

時に、気に入った作品の感想を載せていらっしゃる。

ただ、2011,3,11以降、一時、サイトを閉鎖されている。

のちに、再開されるが、蔵書の記録のみで、個別の作品についての

感想等は述べられていない。

ありがたいことに、ぼく自身、彼の援護射撃を幾度も受けている。

 

これも、そのひとつ。
「今夜も また/地球の裏側で/だれかが 泣いている」時代は、

心ある人には「眠れない時代」なのかもしれません。「ボサボサ頭

の医師」が言ったという「こんな荒廃した社会で/枕を高くして眠

れる人の方が/余程 どうかしているのですよ」という言葉に象徴

されるように「絶望的な深い深い闇の森」の時代なのかもしれませ

んね。そこを感じ取る作者の感性が光る作品だと思いました。

                          (村山精二)