無論、映画における学生運動と、映画公開当時の日本の学生運動は別物だが、ユーミンは、さすが天才で、うまくリンクさせた名曲を作り上げた。

2009年の夏、ユーミンのコンサートに行ったとき、MCでユーミンの口から

「いちご白書をもう一度」という言葉が、確かに聞こえて、ユーミンがこの曲を歌ってくれるのではないかと胸をワクワクさせ、会場も、同じ想いでざわついていた。

それを遮るようにユーミンは「そうじゃないんです」と前置きして「その『いちご白書をもう一度』のアンサーソングを作ったので、聴いてください」といった。

しかし、ぼくは、あくまで個人的にだが、そのアンサーソングがどんな内容の歌だったか、どんなメロディーだったか、まるで憶えていない。曲名すら忘れている。

ぼくはアコースティックギターなら、すこしだけ弾ける。しかし、かなりの偏りがあって、ひたすら、南こうせつ、伊勢正三、松山千春を練習してきた。

この間、テレビを観ていて、昔の映像だが、ばんばひろふみが「いちご白書をもう一度」をかみしめるように歌っていた。ギターを鳴らしていた。

それに感化されて、「いちご白書をもう一度」を練習するようになった。いや、練習するほど、むずかしいコードは使われていない。ただ、情感を込めて歌うことが、重要だなと思った。ひとりさみしく、しかし、ある熱く激しい情感を以て、弾き語ることが、学生運動とは無縁だったぼくの近頃の習慣となっている。