どんなものにだって、寿命はある。
とりわけ、人間の寿命なんて、100年あったとしても、宇宙の時の流れからすれば、瞬間にさえならないだろう。
しかし、だからといって、おろそかにはしない。
愛しすぎて、哀しすぎて、愚かだけど、やっぱり愛しい。
ぼくらは、しがみついている。
人間である、この日この時に。
人間の時
人間の時を終えて
一匹の灰色の蛾に
生まれ変わった
夢を見た
だが 運悪く
張り巡らされた
蜘蛛の巣にひっかかり
縞模様の大きな蜘蛛に
息の根を止められた
妙に現実感のある夢で
全身に冷や汗を いっぱい
かいてしまった
その朝 女ともだちに
大真面目に
夢の出来事を話すと
「おもしろい人ね」
といって
髪をゆらして笑った
その美しい横顔を
見つめていると
不思議な安堵感に
ぼくは 包まれて
今 人間の時を
しみじみと かみしめている