最近、詩の発表が続いている。
しかし、ネタ切れしたわけではないのご安心を。むしろ、書きたいことは、いっぱいあって、頭の中で整理するのに困っている。
現時点では、ありがたくも、詩の発表のリクエストが思いの外多くあって、それならば拙作を書かせていただこうという気持ちで、そちらを優先している。
ところで、ぼくの詩には、父がよく登場する。零戦のパイロットとして、密林のジャングル・スナイパーとして、一杯飲み屋の酒臭い赤ら顔のおやじとして、競馬に自分の人生を重ね合わせる人生敗北寸前の男として・・・・・・・。とにかく、よくでてくる。
以前にも書いたが、父とは、この世では26年間の付き合いだった。
それが長いか短いかは分からないが、父の生き様は、実に多くの創作のタネを残してくれた。
毎日、酔っ払って帰ってくる。給料を落として帰ってくる。職を転々と変えていく。
それでも、愛すべき父だった。散髪代をごまかして、怪獣映画を観せてくれた。
酒臭い息を吐きながら、競馬場こそは人生の縮図だ、と小学生のぼくに言ってのけた。
まあ、エピソードをひとつひとつ挙げていくとキリがない。
そういう父への、甘酸っぱい郷愁感が、今なお残っている。
真夜中のノック
かつて 一度だけ
死んだ親父が ぼくを
訪ねてきてくれたことがある
眠れない夜 暗闇に”コンコン!”と
ノックの音がして 目をこらしてみると
親父がポツンと 宙に浮いていた
「ハイライトが 切れてしまった」と
ぼくに 訴えたあと
暗闇に まぎれてしまった
ほんの一瞬の再会だった
今でも 眠れない夜
息をひそめていると
それが 窓をたたく風の音だと
わかっていても 親父が
また 訪ねてきてくれたのかと
切なさが 胸にこみあげてくる