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不条理文学が好きである。

海外では、「異邦人」のアルベール・カミュや「変身」「審判」のフランツ・カフカなどが、やはり代表格であるが、この国でいうと、安部公房を於いて他はないだろう。

はじめて、安部公房の作品を読んだ時は、衝撃的であった。

芥川賞受賞作の「」を読んだ。ある朝、突然、自分の名前を喪失してしまった男の話である。名札にも、名刺にも、自分の名前が消えている。自分の名前が思い出せない。他人の名前などを忘れることは、よくあっても、普通、自分の名前を忘れることはない。以来、彼は慣習で塗り固められた現実での存在権を失ってしまう。自らの帰属せぬ場所を持たぬ彼の眼には、現実が奇怪な不条理の塊とうつる。マネキン人形やラクダに奇妙な愛情を抱く。孤独な人間の実存的体験を描き、その底に価値逆転の方向を探った、野心作である。(アマゾン商品説明参照)

ぼくは、この小説を読んで、頭がすこし、おかしくなりかけた。

その頃から、激烈な不安障害を持っていたせいかもしれない。

しかし、作品自体には、魅力があった。

ぼくの作品(詩)も、彼らの不条理文学の影響を少なからず受けている。

彼らの作品と出会うようになって、日常の中の非日常を、その作品上に、強く、意識するようになった。