映画「シンドラーのリスト」の公開から20年が経過する。
ぼくも、まだ、広告代理店でコピーライターをやっていて、クライアントとの打ち合わせが、思いがけず早く終わって、帰社までには時間が余りすぎて、さて、どうやって時間を潰そうかと思案していた時に、大阪・なんばの映画館でこの映画を観たのを憶えている。
自らもユダヤ系アメリカ人の映画監督・スピルバーグは「被害者としてのユダヤ人を描いた」と前置きしている。
舞台はナチス・ドイツの占領下のポーランドの都市クラフク。ユダヤ人はゲットー(ユダヤ人居住区)に閉じ込められていた。
金儲けをしようと、ナチス党党員で実業家のオスカー・シンドラーはSS(親衛隊)将校たちを取り込み、軍需工場で賃金の安いユダヤ人を強制労働させ、莫大な利益を上げた。
しかし、シンドラーはクラフクゲットーの解体の惨状を目の当たりにし、心が一変する。強制収容所所長であるアーモン・ゲートSS少尉と取引をし、自分の工場に引き入れて迫害から護るため、全財産を、投げ打って、ユダヤ人を買うのである。その数1100名以上。その時に作られたユダヤ人の名簿こそ命のリストとも呼ばれるシンドラーのリストである。リストの外は死の淵である。
余談ではあるが、写真はクラフクゲットーの解体シーンである。パートカラーが使われている赤いコートの少女は、ソチ・オリンピック女子フィギュアショートでユリア・リプニツカヤ選手が氷上で演じて、監督のスピルバーグは絶賛したという。
映画としては10本の指に入る。
実話に基づいているので、説得力もある。
5つ★の映画であることは間違いない。DVDで確かめていただきたい。
しかし、と思う。
ユダヤ人は解放されて、そのまま国に残った者も少なくないだろう。とにかく、ユダヤ人は世界中に散らばっているのである。
いきさつも、規模も違うとは言え、ユダヤ人がパレスチナ人を女、こども容赦なく、SS顔負けの残忍さを以って殺戮を繰り返している。
第2次世界大戦当時、ユダヤ人の迫害に加わったSSの幹部は、現在も、地の果てまで、追われている。当時の犯罪に時効はない。
それらを考えるとき、「立場、立場で人間は変わる。人間って、こわいな」というのが正直な想いである。
1100名以上のユダヤ人を救ったオスカー・シンドラーは、果たして、安らかな眠りに就けているだろうか。