「ダンサー・イン・ザ・ダーク」はアイスランド出身の歌姫・ビョ-ク主演のデンマーク映画で2000年カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)と主演女優賞を獲得した。我が国にとってデンマーク映画というのは、あまり、馴染みがないかもしれない。外国映画のほとんどが、他ならぬアメリカ映画だから。
しかし。タルコフスキーのロシア映画、スランソワ・トリュフォーのフランス映画、ルキノ・ビスコンティのイタリア映画、テオ・アンゲロプロスのギリシャ映画などは芸術性が高く、ツウの間では、お馴染みだ。とはいえ、デンマーク映画というのは、あまり聞かない。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は魂の叫びの映画である。手持ち主体のカメラワークやジャンプカットの多用によるスピーディーな画面展開、不遇な主人公の空想シーンを明るい色調のミュージカル仕立てにした新奇な構成の作品である。
アメリカのとある田舎町。ヨーロッパからの移民であるセルマ(ビョーク)はプレス工場で働きながら息子と共に暮らしていた。そんな、セルマを見守り続けるのが、なんとカトリーヌ・ドヌーブ。「シェルブールの雨傘」のドヌーブはどこに行った!と叫びたい気持ちだったが、美しく歳を重ねていてくれたのでヨシとする。貧しい生活の中、セルマには先天性の疾患があり、視力は失われつつあった。息子もまた、遺伝により13歳までに手術を受けなければ失明する運命にあった。必死で働き、手術費用を貯めるセルマだったが、ある日、金に困ったとなりの警察官に盗まれてしまい、セルマは警官を殺害してしまう。
セルマはつらい状況に陥ると、空想の中でミュージカルのように歌い踊るのだったが、ついに刑の執行の日をむかえてしまう・・・・・・。ラストシーンのショッキングカットは話題を呼び、今なおファンの間では賛否両論がある。
この映画に希望は見出せない。救いようがない。絶望の2文字だけが頭に残る。
しかし、なんともいえない魅力的な映画であることはたしかだ。
苦しいとき、壁にぶつかったとき、ぼくは、けなげに歌い踊り続ける暗闇のダンサー・セルマをふと思い浮かべたりする。