鉄橋を渡るタイガー1型戦車。武装親衛隊の戦車クルーが4名。
むろん、フィギュアの世界である。1/6サイズで、戦車クルーは30cm。戦車に及んでは全長165cmはゆうにある。重量に至っては、鉄製なので200㎏。
そのタイガー1型戦車が、まもなく、家に届く。
ぼくは、ドイツ軍オタクである。
ただ、ナチス・ドイツの政策や主義とは、無関係である。ネオナチでもない。ぼくは、最近、いちいち、こういう言い訳めいた言葉を口にせねばならないことに、正直言って辟易している。
日本に武士道があるように、ヨーロッパには騎士道がある。特に、ゲルマニア(ドイツ)の騎士は誇りが高い。
武装親衛隊では、クルト・マイヤー、ミハイル・ビットマン、ヨッヘン・パイパー、国防軍ではエルヴィン・ロンメルはその代表格で、その騎士道精神に裏打ちされた、紳士的な振る舞いに敵国からも敬意を表されている。特に、その戦術や捕虜の扱いについてである。
現在、ぼくのプライベートルームにはドイツ軍のⅡ号戦車B型とアメリカ軍のM5スチュアート軽戦車の1/6サイズのディスプレイが存在感を示している。
それだけでも、かなりのスペースを占拠しているが、タイガー1型戦車のスペースは、ちゃんと確保してある。たたみ一畳分。
タイガー1型戦車が、まもなく、家に届く。
胸がワクワク、ドキドキ。
甘酸っぱいせつなさも入り混じって、恋しい、胸が痛い。
玄関のチャイムが鳴った。宅配便だ。ドデカイ箱を4人がかりで運んで来た。
しかし、その中のひとりが、息を切らしながら、申し訳なさそうにいった。
「ご主人、この荷物、重すぎて商品が壊れてしもたんで、いったん、社に持ち帰りますわあ」と踵をかえしてしまった。
「えっ!ちょっと待ってよ!そのタイガー、いくらしたと思ってんの!」と大声でぼくは叫んだが虚しく、空に響くだけだった。
その瞬間、ぼくは、目が醒めた。なんだ、夢だったのかとがっかりした。
そうか、ぼくはタイガー戦車など購入していない。そんな財力もない。
ぼくは、力なく布団をあげて、飯を流し込んで、いやでいやでしょうがない郵便局に出社した。