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ついこの間テレビで、夕方のワイドショーだったが「〇〇ちゃんを救う会」の募金活動の特集が放映された。

1歳の女の子で拘束型心筋症という難病で、赤ちゃんの臓器移植を受けられるアメリカへの渡航費用、治療費、滞在費など、およその総費用2億5千万円を募金によって賄いたいという趣旨のものだった。放映直後、テレビ局に視聴者から、バンバンと募金の申し出があったことは、容易に予想できる。

これまでにも、何度も、テレビや新聞でこの手の募金活動は、よく目にしている。

某放送局勤務の資産家の両親が、やはり、こどもの心臓病で渡米手術のための募金活動を行い、テレビでも取り上げられたが、自身が何の資産の処分もしていないことなどがネット上で惨々な非難を浴びたが、こどもには何の罪もない。

大抵が、乳児から3歳くらいのこどもで、拘束型心筋症」「拡張型心筋症」など心臓の難病が多い。

「早く募金が集まって、助かるといいのになあ」。と本心から願いながら、こういう境遇のこどもたちって、ごまんといるのに、どうしてテレビで放映されたり、新聞の記事になったりする子がいるのだろうという疑問があった。「救う会」って組織さえ作れないこどもの親のほうが絶対的に多数であろうに。

ただのサラリーマンに何千万、何億のお金を身内だけで用意できようはずがない。

運よく数少ないメディアに露出するチャンスがあれば、だれだって、「うちの子を助けてください」ってアピールするだろう。

こどものためには「たとえ世界中を敵に回しても」何とか救ってやりたいというのが親の想いだ。

「but・・・・」。

ぼくが広告代理店でコピーライターをしている時代、親しい同僚のこどもが「拡張型心筋症」だと診断された。余命も宣告され、助かるには渡米して臓器移植するしか道がないといわれた。

同僚は、その日を境に、入院中のこどもに奥さん共々付きっ切りで、会社にも顔を見せなくなった。

ぼくは、ともだちとして街に出て同僚たちと募金活動をしようと考えていたが、その時代死ぬ死ぬ詐欺といって架空の募金活動をして、金を稼いでいるとんでもない輩がいて、社会問題にもなっていた。

そんな背景もあって、現実的には厳しいのではないか、という意見が同僚たちの間で大半を占めた。

それで、会社内で募金活動を開始したが、関連企業の善意を足しても、20万円も集まらなかった。

病院へ見舞いに行くと「日々、ガリガリに痩せていっている」と同僚は、こどもの病気の進行具合を言葉少なに語った。

結局、同僚のこどもは2歳を待たずして、天国へ旅立った。

あのときの、自分の無力さがトラウマになっている。

あれから、20年が経つ。

記事を書くにあたって、親交のある新聞社の社会部の記者に疑問をぶつけてみた。

「それは、やはり、メディアとのコネ。あるいは、視聴率がとれそうな美談かな。でも、それでも、ひとりのこどもの命が救えるかもしれないおおきなきっかけになることは、むしろ、いいことじゃないのかなあ」。と内情を話してくれた。

「なるほど、一理あるな」。と思ったのも事実だ。

それでも、なお、ぼくのこころから「but・・・・」という思いはなかなか消えそうにない。