もはや、会社には、なんの未練もない。
ぼくは、すこし、にやりと笑ってみせて、この相棒と今夜、この街をでる。
よどみきったこの街を。
深い夜をぶっ飛ばす。アクセルを踏み込んで、ハイウェイを流星のように、風のように、ひかりのように疾走する。
山下達郎なんかを、ガンガン、かけながら。
街から何100kmも飛ばし続けて、相棒が、力尽きたら、そこが、ぼくの暮らすべき場所だ。
空と海だけみつめて、生きていく場所だ。
・・・・・相棒と出会ってから、そんな妄想を抱くようになった。
まあ、ぼくは、言わずと知れた「小市民」だから、あと数年は、会社にしがみついて生きていくだろうけれど、相棒は夢を与えてくれる。人生なんて、自分の意思で簡単に、変えられることを、おしえてくれる。人生なんて、むずかしくないよと、おしえてくれる。