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前回の記事の最後に『エレーン』という曲に少しだけ触れた。

しかも、いちばん好きな楽曲だと。

時は遡る。

1980年、気楽なバイト学生だったぼく。その頃、すでに、中島みゆきの熱狂的なファンで、1年に1回発売されるアルバムを、何よりの楽しみにしていた。この時期は桜の頃から五月雨の季節に発表されていた。

発売日、電車に乗ってモール内の大型レコード店で大音響で「エレーン 生きていてもいいですかとだれも問いたい エレーン その答えを 誰もが知ってるから誰も問えない♪」(作詞・作曲・中島みゆき)と郷愁感に満ちたメロディと、文学性のある歌詞が耳に飛び込んできて、魂のどストライクに刺さってきた。「あっ、新しいアルバムや」と感激し、新アルバムを買った。

真っ黒なジャケットの真ん中に縦書きで「生きていてもいいですか」と白抜きの文字で

まるで戒名のように記されてある。

中島みゆきの歌は「暗い」と評されることが多い。

しかし、「暗い」のではなく「深い」のであって、時には「重い」のである。

そういう意味では「生きていてもいいですか」はそれらの形容詞の集大成である。

家でゆっくり聴いてみると、この『エレーン』という曲は、曲調から、フランスあたりの片田舎の薄幸の女性の物語かなと、勝手に解釈していた。

ところが、中島みゆきがコンサートで『エレーン』についてコメントしたことがある。

これは、かつて中島みゆきが住んでいた近所で、外国人娼婦が何者か殺害されるという事件があった。警察も中島みゆきに聞き込みに来たという。しかし、事件は迷宮入りとなったそうだ。

その後、中島みゆきは「女歌」という小説の中で、この事件をもとに短編を書いている。その時の娼婦の名が「ヘレン」。楽曲化するに当たって「エレーン」に変更したという。

「生きていてもいいですか」というタイトルは、たしかに「重い」。

しかし、胸を張って「生きていてもいいですか」と世に問える生き方をしている人は

どのくらいいるのだろうか?