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きょうからGW「我慢週間」?

そんなこと言われなくても、いつだって、我慢してるさ。

来年はピカピカ光る「黄金週間」を過ごせますように。
 

 

                         姉貴

                        

 

姉貴からの電話は

常に ぼくの心を不安にさせた

「お金が足りないから 少し貸してほしい」

涙声で 電話はかかってきた

受話器の向こうに いつも

遠く 波の音がざわめいていた

 

ぼくは その音を聞くたびに

姉貴が嫁いでいった

うらさびしい海辺の町を想った

「明日から ごはんを食べていけない」

姉貴の毎度毎度の 殺し文句だった

 

この世で たったふたりきりの

血の繋がった肉親だったから

ぼくは 何も言わずに

姉貴から 無心の電話があるたび

現金書留を速達で送ってやっていた

 

もちろん

返してもらったことなど

一度もなかった

 

「ごめん 迷惑ばかりかけて

これで 絶対に最後にするから・・・・・・」

何度も聞いた台詞だった

 

電話を切るとぼくは これまでにないような

激しい 虚脱感に襲われて

その場に へなへなとへたりこんでしまった

 

受話器を握り締めたまま

まぶたを閉じると

ぼくが まだ一度として訪れたことがない

姉貴の暮らす ひなびた海辺の町が

おぼろげに 心に浮かんだ

 

にわかに 

灰色の分厚い雲に覆われはじめると

姉貴の町全体を揺らして

ぼくの耳を つんざくように

真っ黒な海が悲鳴を上げはじめた