非常に高いIQを持つ人がいますが、知能を高めるのに重要だったのは ...

このひと月あまり、「ヤな寒気」が背中に張り付いたような症状をベースに、熱っぽいと思って、何度も体温計で測ってみるが、7度に届かない。しかし、熱っぽさはある。でも、風邪でもない。その寒気と倦怠感、無気力感にさいなまれていた。

一応コロナも疑ったが、早い段階で、それはキッパリ否定された。

結局のところ、内科で「自律神経失調症」だと判明し、薬も出してもらった。

薬を飲むと、からだがポカポカしてきて、活力が湧いてくるのが分かった。

薬が効くということは、やはり「自律神経失調症」だったのか。

自律神経失調症」というのは、どちらかといえば「精神科」の領域ではなかったか。

ぼくもメンタルの病気で精神科にお世話になっているが、どうして分からなかったのだろう。

とにかく、しんどくて、このひと月は、短い詩を一篇仕上げただけで、ほとんど何も手につけられなかった。ただ、心のどこかで、一丁前にいい詩を書きたいと、手掛かりになるものを探し続けていた。ぼんやりと、昔を思い出すと、キラリと光るものが、いくつか見えた。

過去の栄光ではあっても、心強かった。結局、最後までオレは詩を書いていくことになるのかと思った。

詩なら、えんぴつとノートがあれば、年を取っても、病気になってもベッドの上で出来るね、とひとはいうけれど、そんなに簡単なものではない。取材、実際に見る、聞く、触れる・・・ノートパソコンの画面などでは、とても知り得ない熱量が必要だ。

ところで、平成15年、ぼくは第14回日本海文学大賞を受賞した。まあ、これも、過去の栄光のひとつかな?

その前年、白鳥省吾賞選考会はこんなにも素敵な作品を第3回白鳥省吾賞に選んだ。

山陽地方に住む、ほぼ同年代の女性が獲得した。

ぼくは、心打たれた。

同時に「負けたくない」と、このぼくを本気にさせてくれた一篇である。

 

 

 

                    バイラは十二歳

 

                         川井豊子

      バイラは十二歳

      モンゴルのマンホールの中に住んでいる

      マンホールはあたたかい

      零下二〇度の外にくらべれば

      食べるもののない貧しい暮らしにくらべれば

      バイラは十二歳

      昼は皿運びをし 夜は居酒屋の前で歌を唄う

      そして別の家族の家に暮らす

      おかあさんに残りのごはんを運ぶ

      バイラといっしょに

      地下の温水管のすきまに眠る

      何百人ものこどもたち

      その子たちが眠りの中で見るのは

      どんな夢なのか

      ふたのないマンホールから

      子供たちはまぶしそうに朝日を見上げる

      柵のそばには

      耳のたれた犬がまちくたびれたように立っている

      凍った道の向こうには

      鉄筋コンクリートのアパートやお店が見える

      マンホールに眠るバイラの上にも

      星空があった

      クラシキシテイのベッドに眠る

      十二歳のジュンコの上にも

      マンホールの上を凍った風は吹き過ぎた

      みどり色したジュンコの屋根にも

      それはたぶん同じ風で

      同じ星空だった

      たくさんのバイラ

      たくさんのジュンコ

      たくさんのバイラの夢

      たくさんのジュンコの夢

      かぞえきれないくらいの星の中の

      青く輝く星の上でのできごとだった