映画「燃えよ剣」の公開から、およそ一年遅れで、鑑賞することができた。
岡田准一の土方歳三は、素晴らしい演技で、これまでにない土方歳三像を作り上げた。
ぼくも、やはり司馬遼太郎の小説で、土方ファンになったひとりである。
豆知識として、この映画には、お馴染みのだんだら模様の隊士の制服は、ごく少数出てくるだけ。実際は写真のように黒一色で統一されていて、下級隊士のだんだら模様も、池田屋事件までの、1年ほど使われていただけのようだ。特に幹部は原則的に最初から黒装束。
武蔵国多摩郡で「バラガキ」(乱暴者、不良少年)と呼ばれた少壮の時代から、京へ出ての新選組結成と維新志士達との戦い、そして江戸幕府瓦解後も官軍に降伏せず戊辰戦争を転戦し、ついに箱館戦争において戦死するまでを扱う。司馬は、新選組時代は京洛で過激志士達を追い回し、戊辰戦争では幕軍残党の将官として戦いに明け暮れる日々を送った土方を、「芸術家が芸術そのものが目標であるように、喧嘩そのものが目標で喧嘩をしている」と評し、これといった政治思想も持たずにさながら芸術的興奮を求めるように戦い続けたその生き様を「喧嘩師」と形容されている。
武士に対する「憧れ」の強さが、生き様に溢れている。
演技指導する原田眞人監督。殺陣などのアクション監督を岡田准一が兼任している。実際、岡田准一の殺陣は凄すぎる。リアルすぎる。
映画のスチール写真。
近藤・土方(左上) 沖田・芹沢(右上)
新選組は多数の志士を殺害したことから、維新体制下では「逆賊」と見なされてまともに顧みられず、単なる人斬り集団として貶められることも多かった。しかし子母澤寛の『新選組始末記』(1928年)により再評価の機運が生まれ、『新撰組悲歌』(1934年)などの映画公開、そしてやや時を置いて発表された本作『燃えよ剣』と、同じく司馬の連作短編『新選組血風録』の登場によって、今日に至るまでの人気が決定づけられたといえる。以降の新選組にまつわる創作作品の多くは、本作と『新選組血風録』で作られたイメージの影響を色濃く受けている。
この写真が撮られたときには、近藤勇と沖田総司は、この世にない。
近藤勇は流山で官軍に降伏し、斬首される。
洋装姿の凜々しい土方歳三。
幕府軍は、さらに北へ向かう。北海道の五稜郭に共和国の旗印を掲げるも、官軍に取り囲まれる。土方は総督、陸軍奉行並の肩書きがあったが、新選組副長・土方歳三として戦死する。
奇しくも、ぼくが好きな歴史上の人物は、今回の土方歳三と関ヶ原の石田三成である。
そのふたりを岡田准一が、原田眞人監督のメガホンで演じている。
しかも、このふたりには共通点も多い。
土方歳三は「形」にこだわり、石田三成は「義」にこだわっている。
時代小説であっても、歴史から、学ぶものは多い。