7月の初旬、京都を訪れた。JR京都駅の改札を出ると、祇園祭は、もう、はじまっていて、浴衣姿の女性の姿もチラホラ。駅前ではちょっとした舞台が作られていて、笛や太鼓や拍子木で祭りを盛り上げていた。祇園祭といえば、四条通り、山鉾巡行、長刀鉾、お稚児さん、やたら暑い日・・・というイメージがあるが、それよりも、ずーっと前から祭りははじまっているのだ。とはいえ、ぼくは、今回の京都も観光ではない。
太田裕美のコンサートが開催されたからだ。
太田裕美といえば、ぼくが中高生の頃、大ブレイクしたアイドル。しかし、キャピキャピ系ではなく、しっとりとしたアーティスト系のアイドルだった。
ピアノの弾き語りの「雨だれ」という曲でデビューを飾った。
心にしみる名曲で、その後も「たんぽぽ」「袋小路」「夕焼け」などピアノの弾き語り路線でファンを獲得していく。ぼくも、この頃の太田裕美が大好きだったが、まだ、メジャーではなかった。
彼女の名が一気に広まったのは、松本隆が作詞した「木綿のハンカチーフ」。
その後も「赤いハイヒール」「しあわせ未満」「九月の雨」などの松本隆作品でヒットを飛ばし、大瀧詠一から「さらばシベリア鉄道」、伊勢正三から「君と歩いた青春」の曲提供を受ている。
最近では、ジョイントコンサートが多かった。
年1回大阪城ホールで行われるLIVE「君と歩いた青春」では、『木綿のハンカチーフ』と『九月の雨』の2曲くらいしか歌われない。他に、伊勢正三、南こうせつ、イルカ、杉田二郎、尾崎亜美が控えているから、時間が取れないんだろうな。
で、今回は東京と京都のみ開催されるソロコンサート。チケットは即日sold-out!
会場の京都劇場はキャパが941席でJR京都駅構内にある。
ツアー中のコンサートではないので、内容の記述も、少しくらいはいいだろう。
ヒット曲満載のライブだろうと、勝手に予想していたが、MCで「きょうは、久しぶりのソロコンサートなので、みなさんが知っている曲ではなく、過去のアルバムの中から隠れた名曲たちを歌わせていただきます」。
「そっか・・・」と受け入れざるを得なかった。しかし、そんな残念っぽい、ぼくの気持ちは、すぐに払拭される。あまり耳にしないけど、なんて、素敵な、癒やされる曲の数々なのだろうと感激してしまった。
「12ページの詩集」というアルバムからはイルカ提供の『ミモザの下で』。これは、ピアノの弾き語りで歌ってくれた。同時期に沢田聖子も歌っているのだが、ふたりともファンなので、どちらがいいとはいえないけれど、ちょっと舌ったらずの高音で歌う太田裕美バージョンは独自の世界観を構築していて、切なくて、泣きそうになった。
アコースティックな2時間は、あっという間に終わった。
ぼくは、幸福感に包まれて、JR大阪駅まで29分、新快速の窓際の席で、うたたねをした。