シルバー文鳥のメロディである。
ヒナのときに我が家にやってきて、5年半だ。
ずーっと健康に育ってくれている。
この間の、火曜日までは・・・・・・。
その日、天気がよく、日向ぼっこをさせようと、ベランダにカゴを移した。
日差しは夏のものではなく、気候的には好条件だった。
しかし、ベランダに出した瞬間、メロディは奇声を発し、止まり木から落っこちて、グッタリとおおきく深呼吸を繰り返し、くちばしをハアハアさせていた。、すぐに、部屋に戻し、手のひらに載せて、声をかけても、みるみる弱っていく。まさに死が迫っている様相だった。
いつだったか、何かの本で、小鳥が弱っているときには砂糖水が効くと書かれてあったことを思い出した。
早速、妻に砂糖水を作らせ、開いているくちばしから、一滴二敵と砂糖水を流し込んだ。
すると、奇跡が起こったのか、メロディはにわかに,元気を取り戻していくように見えた。
でも、止まり木からは一歩も動かなかった。
ひと声を発することもなく。
ぼくは、ずーっと見守った。
やはり、死の危機からは脱していないと思った。
メロディが、もしも、死んでしまうようなことがあれば、ぼくは、哀しみのあまり会社をひと月は休んだだろう。
ところが、3時間も経ったころ、メロディは何気にピッとひと声啼いて、欠伸するように羽を広げて、いのちの再生が始ったのである。上と下の止まり木をいったりきたり、餌も食欲旺盛にガッツガッツ食べ始めたのである。
それから、今日に至るまで、変化はない。
メロディは、平常を取り戻した。
メロディは生還した。
パソコンで調べてみると、文鳥は特に繊細な鳥で、些細なことでも、ショック死を起こすことも珍しくないとあった。たとえば、文鳥の爪を切った時、食器の割れる音を聞いたとき、動物病院に行ったときなどなど。
では、メロディは、あのとき、いったい、何を見たのだろう?何を聴いたのだろう?
ぼくなどでは、気づけないメロディなりのショックがきっと、どこかにあったはずなのである。