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こころの病には、睡眠障害を併発することが多い。

ぼくは、二十歳の頃・・・・創作活動を本格的にはじめた頃だが、家のお風呂に入っていて、ふと自分の将来に想いを馳せた。その瞬間、心臓がパクパクして、このまま死んでしまうのではないかという激烈な不安感にさいなまれ、その夜を境に眠れなくなった。

布団にもぐりこんでも、意識は驚くほどはっきりしていて、朝を迎えて日常がはじまる。

日中、不思議と不眠のせいで、ふらつくとか、思考が機能しないということは起こらなかった。どころか、あくびひとつしない。

ただ、夜が来るのがこわかった。

このまま、眠れなくなって、廃人になってしまうのではないかと本気で思った。

そんな状態で、数ヶ月過ごし、意を決して、内科で診てもらうことにした。医師は粉薬の睡眠導入剤を処方した。早速、その夜、薬を服用したが、薬は劇的な効果を発揮した。

6時間まったく意識がなく、気がつくと朝だった。しかし、それは、心地のよい眠りではなく、至極、機械的な眠りだった。まどろみもなく、強制的に寝かされて、薬が切れると目を醒ましてしまうという日々をくりかえした。

しかし、あまりに不自然な眠りにこわさを覚えて、2,3ヶ月で、その睡眠導入剤を飲むのをやめた。案の定、また、まったく眠れなくなった。

そんな状態でも、ぼくは会社を休まず、詩やエッセイを発表していた。

その間にも、病はぼくのこころを蝕みつづけた。不安神経症は、強迫観念、離人症へと広がり、酷いうつ状態がつづくようになっていた。

新婚の頃、会社も創作活動も順調だったが、ある日の食卓で、突然、ぼくは妻の前でこどもみたいに泣き出してしまった。

翌日、妻につきそわれて精神科をたずねた。ぼくが26歳の時である。

診断はうつ病だった。それも、パニック障害から重症化したものだとわかった。

しかし、医師は「よく、ここまで、我慢したね」とねぎらってくれ「この病気があるから創作活動ができている」と病気の必然性を説いてくれた。

向精神薬抗うつ薬、それとレンドルミンという睡眠導入剤を処方してもらった。

薬を飲みつづけても大丈夫か?と医師には、しつこいほど訊いた。飲まない方が、よっぽど問題だと切り返された。

あれから30年近く、睡眠導入剤の力を借りて、眠りを得ている

ところがである。去年の10月、誕生日でもなんの記念日でもないある日から、睡眠導入剤を服用しなくても、眠れるようになった。

その夜、遅くまでテレビを観ていて、そのまま、朝まで眠ってしまったのである。

飲むはずだった睡眠導入剤は枕元に置いたままだった。その日を境に、ぼくの中で何かが変わった。言葉では言いあらわすことができないが。

ここ、3ヶ月と少し、薬なしでぐっすりと眠ることができている。

もちろん、主治医は、我がことのように、喜んでくれている。