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ダイワハウス D-room
「リッチでもないのにリッチな世界など分かりません。ハッピーでもないのに
ハッピーな世界など描けません。夢がないのに夢を売ることなどは、とても・・・
嘘をついてもバレるものです」という有名な遺書を残して37歳という若さで、
ぼくが業界に首を突っ込んだときには「伝説」になっていた。
杉山がTVCMで手掛けた作品を観て、特に資生堂のCMは芸術的だったし、何か、こっちまで胸がドキドキするような物語があった。「図書館の端っこの席で美少年が、離れた席のひとりのおとなの女性だけを見つめている。女性はそのことに気づきながら、少年の心を弄ぶようにおとなの女っぽさを振りまいている」。このCMが彼の遺作じゃなかったかなあ。たった15秒、30秒の中にドラマがある。
TVを観るとき、業界にいた頃の癖が抜けきれず、番組よりも合間のCMを真剣に観てしまう。近年、ぼくが好印象を受けているのはダイワハウスかな。D-room「サボテンを育てる男」シリーズは、ほほえましい。上野樹里と中村倫也の好演によるものだが、「好きな人と、こういう部屋に住みたい」「こういう朝をふたりで迎えたい」と本気で思わせる。今のところ、ぼくの中ではNo.1のCMだ。
所詮、CM自体が虚構の世界だ。CMどころか、あたりを見渡せば、人生は虚構に満ち溢れている。だから、杉山登志さん、あなたは死ぬ必要がなかった。
ピュア過ぎたんだろうね。でも、死んだら負けだよ。