大阪あべのハルカス美術館で開催されている「楳図かずお・大美術展」を堪能してきた。スケジュールが空いて、気分転換にという意味合いもあるが、楳図かずおは好きな漫画家のトップに君臨し続ける。行かない道理はなかった。
今回のテーマは「ZOKU-SHINGO」。名作「わたしは真悟」の続編。
展示物は、ほとんどがカメラ撮影OKで、ぼくのスマホで撮ったもの。
歪んだり、はみ出たりしているが、ご容赦願いたい。
まず、会場に一歩踏み入れると、そこには「漂流教室」の世界が広がる。
主人公・高松翔の通う大和小学校が、まるごと未来に吹き飛ばされてしまう。
こどもたちだけで、あらゆる困難を克服していく。
翔の母親は、現代から荒廃しきった未来にいる翔たちをサポートしていく。
5年生の西あゆみの不思議な能力で、高松翔の母親とコンタクトを取ることができる。
「漂流教室」のラストシーン。主人公の高松翔たちは、未来の世界で生きていくことを選択する。歴史に残るラストシーンだ。
小学館漫画賞受賞作。
「わたしは真悟」。小学生の悟と真鈴のコンピューター遊びから、町工場の一台の産業用ロボットが意識を持つ。生みの親である、悟と真鈴を求めて、産業用ロボット「モンロー」の壮大な旅が始まる。
5つの電子パネル。連載時の扉絵が数秒間隔で映し出される。
一枚一枚が、美しく、なんとも、ため息が出るようなドラマ性のある扉絵だ。
どれも、凝った扉絵だが、特に印象に残った扉絵をご紹介する。
近くで見ると、迫力もある。
連載初期の大好きな一枚。悟と真鈴の顔も、まだ、定まっていない。この頃は、まだ、絵にも躍動感がある。
いちばんお気に入りの扉絵。無邪気な中に、黒い不安感で充たされる。
立ち尽くしているだけで、不気味さが伝わってくる。
影の向きが、バランスの崩れた世界観を作り出している。
これは、もはや、ぶっ飛んだアートだ。
静かで、とても奇妙な扉絵だが、魅力がある。少し詩的で、少し不条理で。
ゆがんだ線路の向こうまで、歩いて行くのだろうか。
「ZOKU-SHINGO」新作ストーリー展示ルームの入り口。
今回の美術展の「心臓部」。
100を超えるパネル。油絵に悟と真鈴の物語・第2章が綴られる。
楳図かずお渾身の作品である。
このエリアは写真撮影NG。
この先が、カメラNG。
「どうして、わたしたちには、顔がないの?」
問題作「14歳」。
ある種「漂流教室」の続編と位置づけられるが・・・。
チキン・ジョージもいる。
大作だが、個人的には、好きではない。内容も、もひとつだったような気がする。同じような場面が多く、絵が楳図かずお、だとは思えないくらい、上手くなかった。
グッズコーナー。ぼくは、グッズコーナーだけで、2時間もうろうろしていた。目移りするのだ。まあ、優柔不断でもあるのだが。
でも、結局買ったのは、「わたしは真悟」の扉絵のポストカード10枚だけだった。
喫茶店で休憩して、想いに浸る。「やっぱり、楳図かずおは天才だ!」と。
楳図かずおの世界に、魅了された一日であった。