先日、丁寧なお手紙を頂戴した。
20代半ばの女性からだった。
2015年に刊行した第4詩集「にぎやかな食卓」に収録されている「時」と「祈り」という作品に、感銘を受け、人生を一歩踏み出す勇気を貰ったと綴られてあった。
作者の意図と、読者の方の受け取り方は、必ずしも一致しないが、発表すれば、その時点で、おひとり、おひとりの読者の方のストーリーを紡いでいっていただきたい。
ああ、こんなぼくでも、詩を書いていてよかったなあと思った。
読者の方のこころに、しっかりと届けられたようで。
時
花を見て
微笑むことに
一年かかった
鼻歌がでるまでに
三年かかった
街に出るのに
五年かかった
あなたと
見つめあえるのに
さあ あと
何年かかるだろう
祈り
明日を
見失って
泣けるだけ
泣いたら
絶望の底から
見えてくる
「祈り」という
おぼろげな光
慰めでもなく
悟りでもなく
闘うための
最後の武器として