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先の安倍改造内閣の顔ぶれの中に野田聖子氏の姿があって、思い出したことがある。
もう、20年くらい前になるのかなあ。日本郵便が、まだ、国家公務員の時代で、郵便局で働くものは、郵政省(現・総務省)の正規の職員だった。毎月、内容の充実した「郵政」という冊子が職員分発行されていた。仕事のことばかりではなく、過去の偉人たちの名言や、メンタルヘルス疾患の予防法や、有名女優さんのエッセイなどか掲載されていたりして、職員の間でも、よく読まれていた。
その中に『文芸のページ』があって、毎月、詩を募集していた。省内機関誌ではあったが、入選している作品は読者の心にもしっかりと届く、ディテールの凝った、レベルの高い作品が多かった。選者は、朝日新聞社の記者出身の詩人で、菊池貞三だった。
当然、出たがりのぼくも、参戦することになった。
大賞を受賞する前年は「ゼロが飛んだ、夏」。という作品一作で佳作だった。
年が変わって「寂光」「きみがいない」(詩集未収録作)「鉄の墓標」「魔法くんを知りませんか」の4作が1席で入選し、その年の郵政文芸賞の詩部門の大賞に選ばれた。
その年、内閣改造があって、野田聖子氏が初入閣で郵政大臣の職に就いていた。
大臣表彰があるということで、野田聖子郵政大臣より、賞状をもらった。
それが、どうした?という話なのだが、将来の有力な総理候補との「接点」が、かつてあったんだと、自分なりに、ある種の感慨にふけっている。郵政民営化法案にも、政治生命を賭して反対してくれたし、そのせいで自民党を離党したが、復党し、今回の内閣改造では総務(旧郵政省・旧自治省)大臣に返り咲いた。
さて、肝心の作品である。受賞の決め手となったのが「魔法くんを知りませんか」だったという。
魔法くんを知りませんか
だれか 魔法くんを知りませんか
近所の砂山で遊んでいる時
「オシッコしてくる」といったきり
消えてしまった男の子です
あれは 妙に風のない日でした
怪獣の絵のTシャツを着ています
右手に大きなホクロのある男の子です
あれから 長い月日が流れました
最近 ぼくは夢を見るのです
おもちゃのバケツと
スコップを持ったまま
いつまでも さびしそうに
つっ立っている魔法くんの姿を
あれは 妙に風のない日でした
だれか 魔法くんを知りませんか
のちに詩人の安宅夏夫は「魔法くん」というのは、ちょっと漫画的すぎて、「正夫くん」とか「健一くん」にしたほうが良かったのではないかと、評したが、ぼくは「魔法くん」であることを譲れなかった。この詩は「ぼく」という「少年」の感情と視点で書いているからだ。
選者の菊池貞三は次のように、この作品を評している。
「神隠しにでもあったような、ある日突然の男の子の失踪。童話のような単純な明るさの中に、奇妙な『怖さ』がある。理由づけも意味づけもいらない。この〈不在〉のイメージの怖さに詩の味わいがある」。(「郵政」1998年12月号より転載)。