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「ウルトラQ」「ウルトラマン」そして「ウルトラセブン」。そのあとも円谷プロのウルトラシリーズは延々と続くが、脚本もコンセプトもしっかりしていたのは、この3作くらいまでで、以降は、どんどんとお子様ランチ化が進んだ。
現に、ぼくがタイトル名と怪獣名を全部空で言えるのも「ウルトラセブン」までだ。
「ウルトラセブン」ウルトラ警備隊の紅一点、友里アンヌ隊員。
「ウルトラセブン」、特に最終回は、早すぎた名作であり、友里アンヌ隊員は、ハナタレ小僧のぼくら小学生の早すぎた初恋でもあった。
女性とか異性という感覚では無くて、このバッチイ手で触れてはいけないミューズ的な存在だった。
友里アンヌ隊員を演じたのは「ひし美ゆり子」という女優さんだと知ったのは、ずいぶんとあとになってからだった。
彼女はブラウン管の中で、ひときわまぶしい輝きを放っていた。
そして、時は流れた。
ある日、中学の頃かなあ。街なかで一枚の映画のポスターを見て、息をのんだ。
実にケバケバしい色使いのポスターだった。むかしは、こういう映画の宣伝用のポスターが、あちこちに貼られていた。
一時、東映が成人映画路線に舵を切ったことがあった。
大奥か何かのお色気時代劇だったと思うが、その種の作品のヒロインとして、たしかに、われらがアンヌ隊員が、ファンを悩殺あるいは、大いに失望させるような宣伝ポスターが春の風にはためいていた。ぼくは、言葉を失った。
ぼくの中の、何かが壊れて、ウルトラセブン・・・いや、アンヌ隊員を語ることはなくなった。
しかし、ぼくも、ようやく大人になった頃、彼女の気持ちがすこし理解できた。
彼女は「友里アンヌ隊員」である前に、「ひし美ゆり子」というひとりの女優さんであることを。
ずいぶんとぼくは年下になるが、アンヌと同じ時代を生きたことを誇りに思う。
こころは、年を取らない。
少年の日の淡いあこがれも、あの頃のままだ。