■
中島哲也監督の「来る」を観てきた。
「来る」は第22回日本ホラー大賞を受賞した澤村伊智(受賞時は澤村電磁)の
「ぼぎわんが、来る」(受賞時は「ぼぎわん」)が原作のホラー映画。
原作は読んでいない。
監督名だけで、劇場に足を運んでしまうのは、邦画では中島哲也くらいのものではないだろうか。「下妻物語」「嫌われ松子の一生」「パコと魔法の絵本」「告白」「渇き」
など、けっして、ぼくの期待を裏切らないからだ。
その中島哲也のホラー映画ということで、ますます、興味深い。
「リング」では貞子、「呪怨」では伽椰子という具体的な恐怖の対象が明確なのだが、
「来る」は、得体の知れない「あれ」が来るという至極抽象的な恐怖が描かれている。
しかも、スケールがでかい。
主役級のキャストが次々と、いとも簡単に死んでいく。その死に方ひとつにも、中島哲也のこだわりやセンスが感じられる。
ネットレビューなどでは、驚くほど評価が低い。
答えを出さずして、映画が終わるからなのか、「あれ」の正体が不明なことに不満を感じているのか・・・・・・・。ラストシーンを不快に思っているのか。
まあ、純粋なホラーというよりも、壮大なエンターテイメントという感はある。
ポスターに(最恐エンターテイメントとあるように)。
さりとて、人間ドラマの側面もあるし、人物描写が細やかであるし、共同脚本も申し分ない。
最強の霊媒師役の松たか子が、主演のフリーライター役の岡田准一を、お祓いの邪魔だといって、カウンターパンチでぶっ飛ばすサービス精神も忘れていない。
でも、ぼくは心底恐かった。ホラーに酔ってしまった。
タイトルも「来る」より!マークをつけて「来る!」のほうが合っているような気がするが、原作との兼ね合いがあるのだろうか。
中島哲也はCM界出身の映像作家だ。
映画界に転じ、深田恭子、中谷美紀、松たか子の新たな魅力を引き出し、小松菜奈を育てた実績は大いに評価されるべきで、本作に於いても、清純派の黒木華を堕落してゆく人妻役を演じさせ、驚かせた。
個人的には、本年の邦画No.1シネマだ。
中島哲也は、期待を裏切らない。ハズレがない。