伝説のフォークデュオ「風」。伊勢正三と大久保一久。伊勢正三は「正やん」、大久保一久は「久保やん」。その久保やんが急性心不全で亡くなられたことが、きのうのニュースで流れた。
大久保一久はフォークグループ猫解散直前に脱退し、かぐや姫解散コンサート中の伊勢正三とフォークデュオ「風」を結成する。
デビュー曲はかぐや姫4thアルバム「三階建の詩」から『22才の別れ』。
その他『海岸通』『君と歩いた青春』『ささやかなこの人生』などヒットするのは伊勢正三が手掛けた楽曲ばかりだった。伊勢正三は、抒情性と、どこか骨太な歌詞、エネルギッシュなギターパフォーマンスが魅力だった。しかし、フォークデュオ「風」のいちばんコアな部分である「優しさ」を支えていたのは、間違いなく大久保一久だった。
ソフトで控えめな大久保の人柄に惹かれた人も多いはずだ。
大久保にも伊勢作品に遜色のない名曲は多くある。『おそかれ はやかれ』『古都』『三丁目の夕焼け』『あとがき』
『男物のシャツ』『トパーズ色の街』『ロンリネス』『あなたへ』などなど。
近年、伊勢正三のコンサートに行くたび、正やんは大久保一久が長い闘病生活で、復帰に向けて頑張っているとコメントしてくれていた。『風』で彼がいなければ、ぼくは、ただの孤独なひとりの男だったとも。
伊勢正三も大久保一久の死に触れ、言葉では尽くしきれない悲しい想いだったろう。
世代は随分と違うが、昭和フォークにのめり込んだもののひとりとして、ぼくは昨夜、ギターを手に取って、大久保一久の『あなたへ』をとても、そうとても小さな声で弾き語った。
大久保一久・・・・・久保やんのご冥福を祈りながら。